こんにちは、りんごナースです。
日勤の終わりが近づいて、記録もあと少し。
今日はわりと平和だったな、と思ったそのとき。
ナースステーションの電話が鳴ります。

緊急入院、受け入れお願いできる?
今日は、看護師なら一度は経験している、あの時間の話です。

その電話は、勤務交代のころに鳴る
緊急入院や、ほかの病棟からの転棟は、病棟ではよくあることです。
その中でも大変なのが、日勤の終わり、勤務交代の時間の緊急入院でした。
引き継ぎでバタバタしているうえに、日勤の残り時間はわずか。
時間の調整が、とてもしづらいんです。
しかも、受け持ちの患者さんのことも、おろそかにはできません。
頭の中で優先順位を立てるのに、必死でした。
しかも、勤務交代の時間です。
夜勤の人への申し送りにも、入院の方の情報を足さなければいけません。
まだ分かっていないことも多いなかで、何をどこまで伝えるか。
申し送りの順番が決まっていると、こういう日に助かる。

顔を見合わせたら、もう動き出している
日勤の時間帯は、まず師長さんが電話を受けます。

そのあと、日勤のリーダー2人が、誰が受けるかを決めます。
受け持っている患者さんの重さや、その看護師の力量を見ながらです。
勤務交代に近い時間の緊急入院だと、みんな「これからか〜」という顔をします。
でも、それも仕方がない。
たとえば、こんな感じです。

ほうれん草ちゃん、ベッドの準備をお願いできる?
モニターと酸素、それから吸引も。

はい!
……あっ、でも305号室の点滴の交換が、そろそろで……。

そっちは、わたしが見ておくね。
入院の方が上がってきたら、まずバイタルからね。

わかりました、すぐ準備します!
誰かが抜ければ、誰かが埋める。
言葉にしなくても、みんながそれぞれ動き出します。
患者さんが病棟に上がってくるまでに、できること、終わらせられる仕事を急ピッチで進めます。
このときこそ、チーム全体で一致団結です(笑)
やること山盛りが、頭に落ちてくる
緊急入院を1人受けると、こんな仕事が一気にやってきます。
病棟に上がってくる前
- 救急外来や医師から、病名やバイタルサイン、いまの処置、アレルギーなどを聞く
- 部屋とベッドを決める(重症度や感染症の有無を考えて)
- ベッドまわりの準備(モニター、酸素、吸引、点滴台など)
- 受け持ちの患者さんの、急ぎの仕事を先に片づける
病棟に着いたら
- 本人確認と、ネームバンドの確認
- バイタルサインの測定と、全身の観察
- 医師の指示を受けて、点滴、採血、心電図などをすぐに始める
- 処置が始まるなら、その準備と介助
- 検査に呼ばれたら、付き添って一緒に行く
少し落ち着いたら(でも、その日のうちに)
- 入院までの経過や、持病、生活のようすを聞き取る(通院や入院の記録がなければ、一から)
- 飲んでいる薬を、薬剤師さんと一緒に確認する
- 転倒・転落や、床ずれ(褥瘡)が起きやすいかを評価する
- 病棟の案内をして、ご家族に連絡や説明をする
- 看護計画を立てて、記録を書く
たとえば、転倒・転落。
厚生労働省の医療安全のマニュアルには、入院のときに確認することが書かれています。
意識の状態、これまでに転んだことがあるか、ふだんの動作。
入院のその日から、安全のための確認がたくさんあるんです。
緊急で入院する方は、重症であることも多いです。
しかも、検査が盛りだくさんで、先生からは急ぎの処置も頼まれます。
たとえるなら、頭の上から岩が落ちてきて、それを受け止める感じ。
受け止めながら、受け持ちの患者さんのことも見ていなければいけません。
ただ、ひとつだけ。
落ちてくる岩は、患者さんではありません。
一気に押し寄せる、やることの山です。
緊急で入院する方は、いちばん不安な状況で病棟にやってきます。
だからこそ、岩をみんなで受け止めて、目の前の患者さんに向き合うんです。

変化球で、優先順位が崩れる
緊急入院の日に、いちばん苦しかったのは、優先順位の立て直しでした。
朝のうちに、今日の仕事の順番は頭の中で組み立ててあります。
そこに、緊急入院という変化球が飛んでくる。
組み立てた順番が、一気に崩れます。
何から手をつければいいのか。
受け持ちの患者さんの予定は、どこまでずらせるのか。
わたしは、この立て直しがとても苦手でした。
頭の中がいっぱいになって、手が止まってしまうんです。
そんなとき、心強かったのが先輩の声かけでした。

305号室の点滴、終わった?
308号室の血糖、確認できた?

あっ、血糖はまだです……!

じゃあ、それはわたし確認しておくね。
「これ終わった?」「これ確認できた?」
そう聞いてもらえると、抜けていたところに気づけます。
そして、手が回っていないところは、先輩やメンバーが拾ってくれる。
ひとりで抱えなくていいと分かるだけで、頭の中が少し静かになりました。
いま思うと、優先順位を立て直すときのコツは、こんなことだったと思います。
- まず、命にかかわること(呼吸、血圧、急な変化)
- 次に、時間が決まっていること(点滴、薬、検査)
- あとからでもいいことは、思いきってあとに回す
- 手が回らないことは、早めに「まだできていません」と声に出す
たとえば、夕方の予定がこうだったとします。
| もともとの予定 | 緊急入院が入ったあと |
|---|---|
| 15:30 305号室の点滴の交換 | 入院の受け入れ(いちばん先) |
| 16:00 308号室の血糖測定 | 点滴の交換は、時間どおりに(先輩に声をかけて手伝ってもらう) |
| 16:30 記録 | 血糖は、先輩が確認してくれる |
| 記録は、いちばん最後に回す |
ぜんぶ自分でやろうとしないで、頼めるところは頼む。
それも、立派な優先順位のつけ方です。
最後の「声に出す」が、いちばん大事かもしれません。
言ってもらえれば、まわりは助けられます。
先輩たちがフォローしてくれたのも、わたしが固まっているのが見えていたからだと思います。
日勤の仕事は、日勤のうちに
そして、岩はひとつとは限りません。
やっと落ち着いたと思ったところに、また電話が鳴ることもあります。

新人のころ、先輩に教わったことがあります。
「夜勤の人に、できるだけ迷惑がかからないように、日勤の仕事は日勤のうちに終わらせること」
夜勤は、少ない人数で長い夜を守ります。
日勤の仕事を残して帰れば、そのぶんが夜勤の人にのしかかる。
だから、緊急入院を受けた日も、日勤でできるところまでは終わらせて帰っていました。
緊急入院を受けた日は、だいたい20時ごろに帰っていました。
もっとベテランの先輩なら、早かったと思います。
消灯前に帰れたら、いいほう。
残業するのが当たり前の時代だったので、「あと少しで帰れたのに」と感じたことは、正直ありません(笑)
麻痺っていますね。
それでも、「あ……今日は帰りたかったな」と思う日はありました。
友達と会う約束をしていた日です。
でも、そんな日も、落ちこむひまはありません。
アドレナリンが出まくっているので、突っ走るしかないんです。
定時で帰れない日の話は、こちらにも書いています。

今日の小さなごほうび
20時すぎに病院を出たら、同期とラーメン屋へ向かいます。
頼むのは、がっつり系のラーメンに、餃子と生ビール。
同期と並んで、とにかく食らう。
これがあれば、大変だった勤務も達成感に変わります。
そして、次の勤務もまたがんばれる。
でも、これは独身だったからできたのかもしれません。
ママ看護師さんは、こんな息抜きもなく、そのまま家に帰っていくのだと思います。
そう思うと、尊敬しかありません。
ママ看護師さん、本当にすごい!

岩をみんなで受け止めた日は、ちゃんと自分もほめてあげてね。
今日もチームで乗りきったね。
まずは、温かいものを食べるところから。
今日もおつかれさまでした。
